近年、パクチーに続いてクミンがブームになっています。カレーに使われることや羊肉と相性がよいことは有名ですが、それだけでなく、豚肉、鶏肉、牛肉、ソーセージ、キャロットラペ、ポテトフライ、野菜炒め、サラダ…何にかけてもエスニックな風味が出て美味しい、魔法のスパイスと言っても過言ではありません。ここでは、クミンに合うおすすめワインをご紹介します。
ゲヴュルツトラミネール
フランスのアルザス地方の人はクミンが大好き。郷土料理「シュークルート」にはクミンを加えるのが一般的ですし、アルザス地方のウォッシュチーズ「マンステール」はクミンを振りかけて食べられます。うまくできているもので、これらに合わせるアルザスワインはやはりクミンにもよく合います。
そんな中でも一番におすすめしたいのは、ゲヴュルツトラミネールです。クミンに限らず、香りの強いものにワインを合わせる場合の一つの鉄則は、香りの負けないものを選ぶということ。ゲヴュルツはライチや白いバラなどの華やかな香りが大きな特徴で、クミンの独特の香りに負けず、互角に並び立ちます。
また、実は「ゲヴュルツ」とはドイツ語で「スパイス」という意味。これはライチの香りほどは目立ちませんが、ゲヴュルツにはクミンや白コショウ、コリアンダーシードなどの白いスパイスの香りがあり、クミンの香り自体とも調和します。またゲヴュルツトラミネールは元のブドウの糖度が高いゆえに、辛口ワインでもほんのり甘味がありますが、その甘味はクミンのほのかな苦みと辛味を包み込む効果もあります。いろいろな意味で、ゲビュルツトラミネールはクミンとは最高の相性なのです。
リースリング
アルザスワインでもう一つおすすめしたい品種はリースリングです。試しにクミンシードをいくつかかじってみてくささい。すでに述べたように、クミンにはほのかな苦さ・辛みがありますが、それと同時に、ミントのようなスーッとする風味があるのが分かるはずです。この風味は、リースリングの豊かな酸味とキーになり、爽やかな余韻を演出します。また、リースリングの香りには、菩提樹やカモミールに例えられる華やかさがあり、香りの存在感という点でも申し分ありません。
また、酸味には辛味をリフレッシュさせる効果もあります。クミンはさほど辛くはないとは言え辛味はありますし、クミンと一緒にさらに辛味の強いスパイスを使う料理もあるので、その場合は特に効果的です。その場合、ドイツの少し甘口のリースリングを合わせるのも面白いでしょう。甘口が苦手という方もいるかもしれませんが、「カビネット」という表記のワインは甘さは控えめです。ほのかな甘さの奥に酸味がしっかり感じられ決して甘ったるくなく、幅広い料理と合います。
新世界のシャルドネ
アルザス以外の白でおすすめするなら、面白いのはニューワールドの樽熟成したシャルドネです。ニューワールドのシャルドネのざっくりとした特徴としては、トロピカルフルーツのような華やかな香りと果実味、樽に由来する香ばしいバニラの香り、一方で酸味は控えめといったところが挙げられます。ワインの香りの強さはクミンの香りとバランスがよく、それでいてワインの方に足りないスパイス感と清涼感をクミンが補ってくれるので、ワインの味わいに厚みを持たせる効果があります。
新世界のピノノワール
ゲビュルツトラミネールの項で説明したように、クミンはその白いスパイスの香りから、どちらかと言えば白ワインと親和性が高いスパイスです。とは言え、料理によっては、明らかに赤を合わせたほうがよいと思えることもあるでしょう。そんな場合、数ある赤ワインのカテゴリー中から一つ選ぶなら、ニューワールドのピノノワールをおすすめします。
理由は前項のニューワールドのシャルドネとほぼ同様です。ニューワールドのピノノワールは、概して果実味豊富でジャムのような凝縮感があり、強めの樽香も相まって香りがとても華やか。それでいて渋み(タンニン)は比較的穏やかです。クミンの辛味や苦味がワインの渋みと喧嘩せず、むしろ果実味がまろやかに包み込みます。一方で、酸味の少ないニューワールドのピノノワールにクミンの清涼感が付け足されることで、ワインの味わいに厚みをもたらします。
ロゼスパークリング
「料理の流れ的に白も赤も飲みたいけれど二本は飲めない」という場合は、その中間のロゼを選びましょう。普通のロゼでもよいのですが、クミンに合わせるならロゼのスパークリングをおすすめします。
よく冷えたスパークリングの炭酸は、幅広い料理とのバランスをとってくれる働きがあるだけでなく、クミンを含めスパイスの辛味や苦味をリセットさせてくれる効果もあります。普通のスパークリングでも悪くはありませんが、できればシャンパーニュまたはシャンパーニュ製法のスパークリングならなおベターです。シャンパーニュ製法のスパークリングはワインの酵母=アミノ酸がたっぷりとワインに溶け込んでいるため、より幅広い料理との接点を作ってくれます。それがロゼであればさらに万能。ピンポイントのマリアージュではありませんが、困ったときはロゼスパークリングと覚えておいて損はありません。