「肉には赤ワイン」という考え方があります。たしかに赤ワインに合いやすい肉料理が多いのは事実ですが、実際には、さまざまな理由で白ワインが肉に合うケースもあります。以下に、白ワインを肉に合わせやすいパターンをご紹介します。
- 赤身肉よりは白身肉(牛・羊よりは鶏・豚)
※厳密には豚は赤身肉だが、焼いたときの色が白い - 赤身の部位よりは脂身(霜降り肉)
- 厚切り肉よりは薄切り肉
- ウェルダンよりはレア・ミディアム
- 赤ワイン煮よりは白ワイン煮
- 醤油・味噌よりは塩・ハーブ・レモンで味付け
- 黒コショウよりは白コショウで味付け
それぞれの項目が絶対的なものというわけではありません。例えば牛肉は比較的赤ワインに合いやすい赤身肉ですが、レアの薄切りでカルパッチョにすれば白ワインもOK。羊の塊肉も塩茹でにしてクミン塩で食べればゲビュルツトラミネールがよく合います。このようにそれぞれの項目のバランスや優先度は、比較的柔軟に決めることができます。
ただいずれにしても、肉に白ワインを合わせるなら、何かしらの存在感のある力強いものがよいでしょう。ここでは、肉に合う白ワインをご紹介します。
シャルドネ(樽熟成)
まずご紹介したいのは、樽熟成したシャルドネです。樽熟成したシャルドネの酸味はまろやかで、ヨーグルトやバターのような乳製品の香りがあり、また樽から来るナッツやバニラのような香ばしさやコクもあります。肉の種類を問わず、脂身の甘みを味わう肉(牛霜降り肉、イベリコ豚、フォアグラなど)との相性は抜群で、また調理法としては、クリーム煮やゴマ風味とよく合います。
ボルドー白
ボルドーの白は、主にソーヴィニヨンブランとセミヨンのブレンドで造られ、樽熟成するのが特徴です。樽熟成するという点では前項のシャルドネと共通した特徴を持ち合わせていますが、ボルドー白の場合、ブドウ品種にソーヴィニヨンブランが使われているのがポイント。ソーヴィニヨンブランの特徴であるハーブ香・酸味・柑橘が加わることによって、樽熟シャルドネよりも味の接点が増えています。オールマイティーに使えるワインですが、特にハーブや柑橘をアクセントに使った肉と合わせるとよいでしょう。
ゲビュルツトラミネール
ゲビュルツトラミネールも幅広く肉に合いやすいワインの一つです。ゲビュルツの特徴はライチや白いバラなどの甘く華やか香りと、クミンや白コショウのようなスパイシー感。また、辛口でも口当たりにほんのりと甘みがあります。その甘みは肉の脂味の甘みを引き立てますし、もちろんクミン・白コショウなどのスパイスとの相性は抜群。羊などちょっとクセのある肉や、エスニック系の味付けの肉料理と合わせるのにオススメです。
ヴィオニエ
ゲビュルツとちょっと似た系統のブドウで、南フランスが原産のヴィオニエという品種があります。果実味豊かで酸味は控えめ。アルコール度数が比較的高く、味わいは全体的にボリューム感がありふくよかです。前面に出るのはフローラルな甘い香りですが、ほのかにハーブ香もあり、ハーブを使った料理との相性が良好。フローラルな香りとハーブ香が融合することで、草原に咲く花のような香りが口の中に広がります。ローズマリーやタイムを使ってグリル・ソテーした肉料理や、ゲビュルツ同様にエスニック料理と好相性です。
シャンパーニュ
シャンパーニュ(白)も白ワインの中に含めてもよいでしょう。シャンパーニュは酵母と長期間接触して熟成されるために、他のどのワインよりも旨味成分のアミノ酸が多く含まれています。肉の旨味成分も同じくアミノ酸ですので、シャンパーニュと肉は本質的に好相性なのです。ちなみにフランス・パリには、鴨とシャンパーニュのマリアージュを売りにした人気レストランがあります(CANARD & CHAMPAGNE)。鴨(マガモ)は一見白ワインとは合いにくそうなジビエの一種で赤身肉ですが、このレストランが人気ということは、肉が白ワインにも合うということをフランス人が証明しているのではないでしょうか。