「アップルパイ」とは、甘く煮たリンゴを詰めてオーブンで焼いたパイのこと。よく煮たスイーツで、フランスにはリンゴの上にタルト生地を乗せて焼いた「タルト・タタン」がありますが、ワインとの相性を考える上ではこれらは同じものと考えてよいでしょう。ポイントはやはりリンゴの甘味と酸味で、これと共通する要素を持つ爽やかな甘口ワイン(甘すぎないもの)が基本方針となります。ここではアップルパイ/タルトタタンに合うワインをご紹介します。
シードル
リンゴのスイーツには、リンゴで造ったスパークリングワイン「シードル」を合わせるのが間違いありません。おすすめは「ドゥミ・セック(中甘口)」の甘さで、フランスのリンゴは日本のリンゴより酸味があるので甘味は爽やか。ほどよい甘さで、ほとんどのアップルパイ(タルトタタン)とよく合います。逆に「ブリュット(辛口)」は、一般的なワインのブリュットよりもほのかに甘味を残した造りなので、甘口が苦手な方はこちらを合わせるのもよいでしょう。また、シードルはアルコール度数が4~5度と低めなので、アルコールが弱い方にもおすすめです。
ヴーヴレ甘口
実はタルトタタン発祥の地はフランスのロワール地方。そしてロワール地方を代表する白ワインと言えば、シュナンブラン100%で造られるヴーヴレ。タルトタタンには「ヴーヴレの甘口」を合わせるのが定番とされています。いつも思いますが、同郷の食べ物とワインが合うというのは不思議なもので、シュナンブランにはまさにリンゴやリンゴの蜜の香りと豊かな酸味があり、タルトタタン(リンゴを使ったスイーツ)と相性が抜群なのです。
ヴーヴレの甘口には「セック」「ドゥミ・セック」「モワルー」「ドゥー」と4段階があります(セックが一番辛口、ドゥーが一番甘口)。実はタルトタタンには「モワルー」を合わせるのが本当の定番とされているのですが、実際のアップルパイ/タルトタタンはものによって甘さはさまざまですので、これは一概には言えません。「スイーツが甘さ控えめならワインも甘さ控えめ」「スイーツ甘さ濃厚ならワインも甘さ濃厚」を基本的な考え方として、あとはお好みで使い分けるとよいでしょう。
リースリング(甘口)
ドイツの名物、甘口リースリングもアップルパイとは好相性です。上のシュナンブランにあるリンゴの香りがどちらかというと熟した黄色いリンゴであるのに対し、リースリングのほうは青いリンゴの香り。またレモンなどの柑橘の香りや豊かな酸味もあり、アップルパイのリンゴの爽やかさと絶妙に調和します。ドイツのリースリングには甘さのレベルが数段階がありますが、カビネット~シュペートレーゼ程度がおすすめ。
ロゼ・ダンジュ
タルトタタン発祥の地、ロワールには「ロゼ・ダンジュ」というロゼの半甘口ワインもあり、これもアップルパイにはよく合います。ロゼダンジュの香りの特徴は、柑橘系フルーツとフレッシュなストロベリー。アップルパイに新たな味の要素を加えて、口の中を華やかにしてくれるでしょう。上でご紹介してきた三つのワインは、アップルパイとリンゴの香り同士で合わせるマリアージュでしたが、このように一方がもう一方を補うというパターンのマリアージュも面白いものです。
アスティ・スプマンテ
「一方がもう一方を補う」系でもう一つ面白いのは、イタリアの甘口スパークリング「アスティ・スプマンテ」です。アスティで最も特徴的なのは、マスカットの香りですが、他にもハチミツやオレンジの香りもあり、アップルパイの味わいに広がりを与えてくれます。またスパークリングワインというだけで、食卓に華やかさが加わりますので、その点でもおすすめです。
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