多かれ少なかれ、魚介類には「潮の香り」「磯の香り」などと表現される香りがあります。このような香りは、本来ブドウにはないものなのですが、面白いもので、海岸近くの海洋性石灰質が多い土壌から生まれた軽めの白ワインには、後味にほんのりこれらの香りが感じられます。ハマグリに合うのはまさにこのタイプのワインです。
ここではハマグリに合うワインを5つご紹介します。尚、ハマグリに合うワインは以前ご紹介した「牡蠣に合うワイン」とほぼ共通しますが、同じワインをご紹介しても面白くないので、当該記事でご紹介したワインは除外しました。
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【イタリア・マルケ州】カサル・ディ・セッラ・ヴェルディッキオ/ウマニ ロンキ
ヴェルディッキオは、イタリア中部・アドリア海沿岸にあるマルケ州のワイン。特にヴェルディッキオが栽培されるイエージ地区は海に近く、ワインにも潮の香りが顕著です。潮の香りがするものが多いイタリアワインの中でも、ヴェルディッキオはその代表格と言ってよいでしょう。潮の香りだけでなく、引き締まった酸味やほどよい苦みも魅力で、ハマグリとよく合います。
【イタリア・ヴェネト州】ソアーヴェ・セレオーレ/ベルターニ
ソアーヴェは、イタリア北部・ヴェネト州のワイン。マルケ州同様、アドリア海沿岸に面しています。イタリアンを名乗るレストランでこれを置かないところはないと言ってもいいくらいの、イタリアを代表する白ワインです。正直なところ、大量生産のソアーヴェは、面白みのない水のようなものが多いですが、このベルターニが造るソアーヴェは、果実味、酸味、ミネラルがバランスよく高レベルで、コクもある、管理人が知る限り、現在最高のソアーヴェです。
【イタリア・ラツィオ州】フラスカーティ・スペリオーレ・セッコ/ポッジョ・レ・ヴォルピ
フラスカーティは、イタリアの首都ローマがあるラツィオ州の白ワイン。マルケ州やヴェネト州とは反対側のイタリア中西部、ティレニア海に面しています。土壌は水はけの良い火山性で、カリウムなどのミネラルを多く含み、ほんのり海の塩味が感じられます。全般的に爽やかで軽快、魚介に合わせる食中酒として万能ですが、画像のポッジョ・レ・ヴォルピのフラスカーティは果実やハーブの香りも華やかで、満足感の高い一本です。
【イタリア・プーリア州】トルマレスカ・シャルドネ/アンティノリ
イタリア・プーリア州は、イタリアの地図のちょうど「かかと」の位置にある地域。温暖な地中海性気候に恵まれ、ワインの大量生産地になっています。優秀なDOP(原産地呼称)ワインもあるのですが、ちょっとひねってご紹介したいのが、国際品種のシャルドネ。「ソライア」で有名な名門ワイナリー「アンティノリ」がプーリア州で造るシャルドネは、熟した柑橘やほのかな樽香と共に、潮の香りが並び立っているのがなんとも面白い味わい。フランスともチリとも違う、爽やかでありながら味わい深いシャルドネです。
【フランス・アルザス】メール・エ・コキアージュ/ジュリアン・メイエー
最後にもうひとひねりしてご紹介したいのは、フランス・アルザス地方のワインです。ここまでご紹介してきたイタリアのワインは全て沿岸で造られるものでしたが、アルザスは海に面していない山岳地帯。潮の香りがするワインができるのか?と不思議に思うかもしれません。しかし、画像のワインの造り手、ジュリアン・メイエーの畑は、なんと大昔の海が隆起してできたという砂利・泥灰土壌。ブドウ品種がもともとミネラル豊富なシルヴァネールとリースリングということもあって、まさに沿岸のワインを思わせる潮の風味があります。いみじくもこのワインの名前は「メール・エ・コキヤージュ(海と貝)」。その名前に偽りはありません。