最近話題の熟成肉。乾燥する過程で肉に付着した微生物が、タンパク質をアミノ酸に変えるため、旨みが増し、風味豊かで複雑な味わいになります。「熟成」と言えば、ワインもまさに熟成させる飲み物。熟成肉は長期熟成したワインと好相性です。また、熟成肉は高級ですので、バランス的にワインもそれなりにグレードの高いものが求められるでしょう。ここでは、さまざまな要素を踏まえながら、熟成肉に合うワインをご紹介します。
リオハの赤(グラン・レセルバ)
長期熟成したワインは探せば一応は見つかります。ただし、熟成させるということは、造り手や販売店にとってみたらそれだけ在庫コストがかかるということですので、長期熟成ワインは一般的にそれなりに高価になります。
そんな中、ありがたいのがスペイン・リオハのワインです。スペインの赤ワインの熟成表記には、「クリアンサ(24ヶ月以上熟成)」「レセルバ(36ヶ月以上熟成)」「グランレセルバ(60ヶ月以上熟成)」の3種類があり、一番熟成の長い「グランレセルバ」でも安いものであればなんと1000円台からと、大変リーズナブルです。熟成によって角がとれ香りの複雑味が増したワインは熟成肉とよく合います。
カリフォルニアのメルロー
肉は熟成させることによって、旨味と共に甘味も増します。この甘味は、ワインのまろやかな果実味と好相性です。メジャーなブドウ品種の中で果実味が豊かな品種と言えばメルロー。特にカリフォルニアなど温暖な地域のものがおすすめです。カリフォルニアのワインは木樽の香りが強いのもポイントで、熟成肉は香り自体普通の肉よりも強く、また熟成によってナッツの香りが生まれるので、これが木樽の香りとよく合います。
一つの問題は、カリフォルニアワインは若いうちに出荷するものが多く、熟成したものを入手しにくいということ。それでも、メルローはカベルネソーヴィニヨンに比べると、若いうちから土っぽい熟成の風味が出やすい品種なので、その意味でも熟成肉とは相性がよいと言えます。
アマローネ
「アマローネ」はイタリアの高級ワインの一つ。陰干しして糖度を高めたブドウで造られるため、ブドウの全てのエキス分が凝縮され、超濃厚ガッツリフルボディに仕上がります。前項のメルロー同様、果実味という点でも申し分ないですし、2年以上の樽熟成と6カ月以上の瓶内熟成を経て出荷されるため、ほどよくこなれた熟成の風味もあります。濃厚なソースでいただく熟成肉との相性はもちろんよいですし、シンプルな味付けで食べる場合は、口の中で素晴らしいソース代わりになります。
ただし、アマローネはその手間のかかる製法ゆえ全般的にかなり高価。格安でアマローネの味わいを楽しみたい方は、同じ製法で造られるチリの「ヴィーニャ・ファレルニア」もおすすめです。
シャンパーニュ
「肉には赤ワイン」と思っている方は多いとは思いますが、実は肉に合う白ワインは多くあります。特に熟成肉に合わせたいのがシャンパーニュです。そのポイントはアミノ酸。シャンパーニュは長期間に酵母に触れて醸造されるために、他のワインよりも旨味成分であるアミノ酸が他のワインよりも多く含まれます。冒頭でも述べたように、熟成肉も熟成の過程でタンパク質が分解されアミノ酸に変わっているので、アミノ酸=旨味同士が相乗効果を発揮するのです。
数あるシャンパーニュの中でも、やはりできれば長期間熟成したものが望ましいです。おすすめの一つは画像の「エグリ・ウーリエ」。最低5年以上熟成してから出荷しているため、その複雑な旨みは格別です。
熟成リースリング
リースリングは、柑橘の香り、豊かな酸味とミネラルが特徴の、すっきり爽やか系の品種。これを肉と合わせると言うと意外に思う方もいるかもしれません。しかし、リースリングはその豊かな酸味とミネラルゆえに長期熟成が可能で、熟成させると酸はこなれ、ナッツやドライフルーツの香りが出てきて、素晴らしく奥深い味わいになります。このような熟成させたタイプのリースリングは熟成肉ととてもよく合うのです。
また、肉は食べ続けるとどうしても重さを感じてくるので、リースリングの酸味は重さを和らげてくれる効果もあります。ただし、これは前項のシャンパーニュにも言えることですが、熟成肉にはソースは使わず、塩だけでシンプルにいただくのがよいでしょう。
問題は熟成したリースリングを探すことですが、画像のシャトー・ドルシュヴィールなどは、古酒の蔵出しが比較的多い貴重な造り手。値段はさすがにそれなりにいってしまいますが、その味わいは十分に価格の価値があります。