クグロフとは、うねりのある帽子のような型でつくる、ブリオッシュに似た焼き菓子。発祥の地とされるフランスのアルザス地方のものが有名ですが、ドイツ、オーストリア、スイス、イタリアなど近隣のヨーロッパ諸国でもつくられています。
クグロフに限らず、スイーツに合わせるべきワインは、基本的には甘口ワインです。甘口が苦手な方や、「スイーツにはコーヒーか紅茶でしょ」という方もいるかとは思いますが、是非クグロフと甘口ワインとのマリアージュを試してみてください。ここでは、クグロフが食されている国のワインから、クグロフに合うワインをご紹介します。
ピノ・グリ
まずご紹介したいのは、クグロフ発祥の地アルザスのピノ・グリです。ピノ・グリは、ハチミツ、完熟した桃、トロピカルフルーツなどを思わせる濃厚な果実味と控えめな酸味、ほのかな苦みが特徴で、クグロフの味わいに深みと華やかさを加えてくれます。元のブドウの糖度が高いために辛口でも甘口になりやすい品種で、画像のマルセル・ダイスのピノ・グリは、アルコール度数13度と十分なボリュームを保ちながら、万人に受け入れられやすいほどよい半甘口に仕上がっています。
アルザスのゲビュルツトラミネール
冒頭で「スイーツには甘口ワイン」の述べましたが、クグロフに合わせるときにはちょっと注意したい点があります。それは、クグロフという焼き菓子の特徴として、どんなにしっとりした食感のものでも、どうしても水分が欲しくなるということ。ちなみに時間が経ったクグロフはパサパサ感が出てくるため、これを補うために、クグロフにラム酒を浸した「アリ・ババ」というスイーツが生まれたくらいです。
つまり、甘みがあまりに濃厚な甘口ワインだと多くを飲めないので、クグロフと合わせたときにバランスが悪くなってしまいます。そこでおすすめしたいのがゲビュルツトラミネールです。「辛口」を名乗っていてもほんのり甘さを感じる品種で、クグロフとしっかりマリアージュしながら、ある程度ゴクゴク飲むこともできます。ちなみに、画像のヒューゲルのゲビュルツは、今回ご紹介しているワインの中では最も甘くないので、辛口派の方にもおすすめです。
また、ゲビュルツという品種はスパイスの香りがあるので、ジンジャーパウダーやオールスパイスなどのスパイスを使ったクグロフと合わせるのに特におすすめです。
クレマン・ダルザス(甘口)
「クレマン・ダルザス」とは、シャンパーニュと同じ製法で造られるアルザスのスパークリングワインのこと。手間がかかっており高品質なのに、シャンパーニュよりはるかにお安いのが魅力です。そんなクレマン・ダルザス、もちろん辛口も美味しいのですが、クグロフに合わせるなら甘口を選びましょう。実はクレマン・ダルザスは辛口がほとんどで、甘口は非常に少ないのですが、画像のルネ・ミューレはその甘口を手掛ける数少ない造り手の一人。爽やかな甘さの中にある複雑な旨みは、クグロフとの無限ループを生み出すこと間違い無しです。
クレマン・ダルザス・ドゥミ・セック/ルネ・ミューレ
(希少な半甘口クレマン。5種類のブドウのブレンドで生まれる複雑な香りと味わいが旨い)
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リースリング(甘口)
冒頭でも述べた通り、クグロフはドイツでも愛されているスイーツ。ドイツの名物、甘口リースリングも好相性です。ドイツワインは甘いからと敬遠する人も多いようですが、リースリングという品種は酸味が非常に豊かで、甘口ワインの甘さを決して甘ったるくさせません。またドイツワインには甘さの等級があり、「カビネット」は最も甘さの穏やかなタイプ。甘口が苦手な方も、甘さの奥にある酸味を意識すれば、きっと甘口リースリングの魅力に開眼するでしょう。是非お試しください。
アスティ・スプマンテ
フランス北部のアルザスから離れているイタリアにクグロフがあるというのはちょっと不思議な気もしますが、イタリア北部のピエモンテ州では、クグロフは「クーゲルホープ(Kugelhupf)」と呼ばれ親しまれています。おそらく国境を接しているスイスを介して伝わったものでしょう。
そんなクーゲルホープとのマリアージュの定番とされているのが、ピエモンテ州名物の甘口スパークリング「アスティ・スプマンテ」です。マスカットの香りが特徴的なアスティはクグロフに加えられるレーズンと完璧に調和し、またハチミツ、オレンジなどの風味がクグロフの甘みに広がりを与えます。今回ご紹介しているワインの中では最もお安く、またスーパーや近所のワインショップで入手しやすいのも魅力です。