日本では苦手な人が多いラム肉ですが、その魅力は独特の野生的な風味。ワインを合わせるときは、ラムの風味に負けない力強いものや、ラムと同じような野性的な風味を持つもの、またはラム肉にかけると美味しいスパイスの風味を持つものがよく合います。「地元の料理とワインは合う」という原則がありますが、面白いもので、ラム肉が好まれる地域の赤ワインは、たいていこのような特徴があります。ワインを選ぶときは郷土料理を参考にするとよいでしょう。ここでは、フランスやイタリアの郷土料理をキーにして、ラム肉に合うワインをご紹介します。
ボルドー(ポイヤック)
フランス・ボルドー地方の郷土料理の一つに「アニョー・ド・レ(乳飲み子羊)」のローストがあります。特にポイヤック地区のものが有名で、ポイヤックのワインと合わせるのが定番とされています。ボルドーのワインは全般的にフルボディですが、ポイヤックのワインは、他の地区と比べてもより力強いのが特徴。スーパーワインがキラ星のごとく居並ぶポイヤックでおすすめワインを紹介するのは悩みますが、手頃な価格帯では、メドック格付け2級「ピション・ロングヴィル・バロン」の造るデイリーワイン「キャップ・ロワイヤル」(約1500円)をオススメします。デイリーワインだけあってやや軽めながら、熟した果実の風味、なめらかなタンニン、香ばしい樽香のバランスが素晴らしく、ポイヤックらしいリッチな味わいも楽しめます。予算に余裕のある方は「ポンテ・カネ」をどうぞ。5大シャトーと互角の実力を持ちながら価格は約10,000円。同じポイヤックのラトゥールやラフィットと比べると断然コスパの高さが際立つワインです。
コート・デュ・ローヌ(クローズ・エルミタージュ)
フランス・ローヌ地方の郷土料理の一つに、子羊の煮込み「ナヴァラン・ダニョー」があります。ラム肉と野菜を、ハーブやスパイスをたっぷり効かせたトマトソースでじっくり煮込んだ料理です。ローヌ地方の赤ワインを代表するブドウ品種「シラー」には、黒コショウのようなスパイシーさと血やなめし皮などの動物っぽい風味があり、もちろんこの料理とは相性抜群。そんなシラーの風味を手軽に楽しめるおすすめワインが、ギガルの「クローズ・エルミタージュ・ルージュ」です。シラー100%で造られており、シラーのワイルドな風味・魅力を存分に堪能できます。
シラーズ
オーストラリアは、羊の頭数が中国に次いで世界で2番目に多い国。ラムチョップのハーブグリルなどの形で、羊肉はよく食べられています。そしてオーストラリアの赤ワインと言えば「シラーズ」。上でご紹介したフランスの「シラー」と元は同じ品種ですが、より気候の温暖なオーストラリアでは、ブドウはより果実味が濃く、酸味が穏やかになります。「ワインの酸味が苦手」または「濃いワインが好き」という方は、「シラー」よりも「シラーズ」を選ぶのがよいでしょう。また、タレに甘みのあるジンギスカンは、果実味豊富なシラーズとよく合うのでオススメです。
バンドール
フランス・プロファンス地方には、子羊モモ肉のグリエ「ジゴー・ダニョー」という郷土料理があります。プロヴァンスのワインには、ロゼや白ワインなどさっぱりしたものが多いのですが、やはりジゴー・ダニョーに合う力強い赤ワインはあります。それが「バンドール」。主要品種は「ムールヴェードル」で、シラーによく似た特徴を持つスパイシーで野性味のあるフルボディワインができます。栽培が難しいこともあり、知名度は低いですが、そのポテンシャルはカベルネソーヴィニヨンやシラーなどのメジャー品種と比べても引けを取りません。ボルドーやローヌと比べるとマニアックなワインですが、一度試してみる価値はありますよ!
シチリアの赤ワイン
イタリアのシチリア島も羊がたくさんいる地域です。郷土料理に「アニェッロ・アッグラッサート」というものがあり、これは子羊とじゃがいもを赤ワインで煮込み、仕上げにチーズを振りかけてさっと煮こんだもの。そのチーズにも羊乳のチーズ「ペコリーノ・シチリアーノ」が使われます。いかにもシチリアの力強い赤ワインと合いそうですね!シチリアの赤ワインは、地ブドウのネロ・ダヴォラが有名なのですが、ここではあえて、国際品種のシラーを100%使ったワインをおすすめします。温暖なシチリアらしく果実味豊かで、シラーらしいスパイシー感もよく出ています。なんとこのワインは約1000円!上で紹介しているコート・デュ・ローヌのシラー100%(クローズ・エルミタージュ)と飲み比べしてみるのも面白いでしょう。
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