日本のおふくろの味「肉じゃが」。肉、じゃがいも、その他の野菜を、醤油、砂糖、みりん等で甘辛く煮たこの料理は、ミディアムボディの赤ワイン、特に香りや味に甘いニュアンスがあるものと抜群の相性です。世界のワインを見渡せば肉じゃがに合う料理はいろいろ見つかりますが、和食だけに、ここでは日本ワインに絞って、肉じゃがに合うワインをご紹介します。ちなみに、みりんや日本酒の代わりに赤ワインを使って調味すると、さらに赤ワインに寄り添いますので是非お試しください。
メルロー
メルローというブドウ品種の特徴を一言で説明するなら「こくまろ」。産地やグレードによって凝縮感の違いはありますが、概して果実味が豊かで渋み・酸味は穏やか。そのまろやかな優しい味わいは、肉じゃがの甘さとよくマッチします。またもう一つのポイントは、メルローが土(腐葉土)の香りが出やすい品種だということ。肉じゃがにはじゃがいもやニンジンなどの根菜類を使いますし、醤油の熟成した旨味とも好相性です。
マスカットベーリーA
マスカット・ベーリーAは日本の固有品種の一つ。イチゴキャンディーや蒸かしたサツマイモ、和の砂糖菓子のような甘い香りが大きな特徴で、果実味はフレッシュ。まさにフルーティーという言葉がピッタリくるワインです。味は基本的に辛口ですが、香りが甘いので全体に甘い印象があり、肉じゃがの甘さとよく合います。
シラー
肉じゃがの肉に豚肉を使うか牛肉を使うかには地域差があるようです。あるいは牛肉を使いたくても高いので豚肉にするということもあるかもしれません。いずれにせよ、一つ言えるのは、牛肉のほうが豚肉に比べ、良くも悪くも特有の獣臭さがあるということ。もし牛肉を使うのであれば、合わせるワインはシラーが魅力的な選択肢です。シラーには血やなめし皮などの動物っぽい香りやスパイシーな風味があり、牛肉とよく合います。
シラーは南仏ローヌ地方で有名な品種で、日本ではマイナーですが、画像のスズランワイナリーはシラーの数少ない優れた造り手。プルーンやレーズンなどの凝縮した果実の甘みあり、肉じゃがの甘みともマッチします。
ブラッククイーン
ブラッククイーンも前述のマスカットベーリーA同様に日本の固有品種の一つです。知名度は低いですが、濃い黒系果実の風味と一本筋の通った豊かな酸味があり、優れたワインを生み出すポテンシャルを持っています。ただしその酸味ゆえに、ともすると酸っぱさの勝ったワインにもなりがち。そんな中、画像のミュゼ・ドゥ・ヴァンのブラッククイーンは、ボジョレーヌーヴォーで使われる醸造法と、樽熟成を取り入れることにより、酸味をほどよく和らげ、果実味・酸味・樽香のバランスが素晴らしいワインに仕上げています。冒頭で述べたように、調味に赤ワインを使った肉じゃがと特によく合うでしょう。
赤のスパークリング(やや甘口)
イタリアに「ランブルスコ」という赤の甘口スパークリングワインがあります。優しい泡立ちとフレッシュな果実の旨味・甘味が魅力の、女性人気の高いワインです。チーズやスイーツと合うことでは定評がありますが、甘口と言うことで食中酒としては敬遠する人もいるかもしれません。しかしその甘さには種類があり、甘さ控えめの「セッコ」のタイプは、実は砂糖・醤油ベースの甘辛味の和食とはよく合うのです。
というわけで、肉じゃがにはもちろんランブルスコを合わせてもよいのですが、ここで紹介したいのは日本ワイン、蒼龍葡萄酒のスパークリングです。食用にも使われるコンコードという品種を使ったワインはほどよい「セッコ」の味わいで、香りは華やかでフルーティー。まさに「日本のランブルスコ」です!