「ポトフ」とはフランスの家庭料理の一つで、フランス語でいう「火にかけた鍋(pot au feu)」。要は「肉と野菜の煮込み料理」です。面白いのは入れる肉の違いで、日本のポトフでは入れる肉は鶏肉やソーセージのことが多いと思いますが、フランスでは基本的に牛肉を入れます。どんな肉を入れるかは、ワインとの相性を左右する大きなポイントと言ってよいでしょう。ここではポトフに合うワインをご紹介します。
シャルドネ(樽熟成)
冒頭で「どんな肉を入れるかは、ワインとの相性を左右する一つのポイント」と述べましたが、一方で、ポトフは、素材の持ち味を生かした、塩味メインのシンプルな煮込み料理です。料理の色も透明~白なので、マリアージュの原則としては、入れる肉が何であれ、合わせるワインは白ワインということになります。入れる肉が鶏肉だったらなおさらです。
ただし、肉のコクがよく出ていますので、白ワインの中では力強いものがよいでしょう。力強い白と言えば、樽熟成したシャルドネを選ぶのが無難です。酸味が得意または上品さを求める方はブルゴーニュ産を、酸味が苦手またはコスパ重視の方はチリ産を選ぶとよいでしょう。
シャンパーニュ
「力強い白ワイン」のもう一つの方向性がシャンパーニュです。爽やかな喉越しに目が向きがちなシャンパーニュですが、その複雑な製法から、実は非常に旨味が深く力強い味わいで、野菜や肉から出る滋味深い出汁に通じるものがあります。またシャンパーニュには土っぽいミネラルの香りや、ゆでた根菜類の香りがあり、ポトフに入れることが多い根菜類とも好相性です。
ボジョレー
ポトフに入れる肉がソーセージで、赤ワインを合わせたいと思ったら、まず思いつくのはボジョレーです。ボジョレーは、ソーセージなどの加工肉に合わせる定番ワインの一つとされています。
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ピノノワール
ポトフは世界中で親しまれている料理ですが、日本以外では、カベルネソーヴィニヨンやメルローなどの力強いワインを合わせる人が多いようです。これはおそらく、入れる肉が牛肉だからというのが大きいのと、またポトフには一般的に黒コショウを加えるので、これらの力強い赤ワインとの接点は確かにあります。
しかし、個人的には、ポトフに力強い赤ワインはちょっと違うかなという気がします。牛肉を食べているときはよいとしても、肉の倍以上の量はあるであろう野菜とマリアージュするとは思えません。入れる肉が鶏肉やソーセージだったらなおさらです。
やはり赤ワインを合わせるなら、入れる肉が何であれ、ミディアムボディがよいと思います。前項のボジョレーもミディアムですし、フランスワインでミディアムボディと言ったら、代表格はブルゴーニュのピノノワールです。肉が鶏やソーセージなら軽め、牛肉ならしっかりめ、と使い分けるのもよいでしょう。
ロゼワイン(タヴェル)
正直言うと、個人的には「ポトフには白と赤どちらを合わせたいか?」と聞かれたら「白」と答えます。とは言え、ソーセージや牛肉はどちらかと言えば赤ワインと合う食材ですし、ポトフの調味に使う黒コショウも同様です。ただしその割合は、ポトフ全体の中では決して大きいものではありません。
そこで浮上してくるのがロゼワインという選択肢です。特におすすめしたいのがローヌ地方の「タヴェル」です。ロゼにしては濃いめの、スパイスの香りがある辛口で、飲み応えがあります。肉や黒コショウとほどよく寄り添いつつ、優しい果実味が野菜の甘みを引き立てるでしょう。