見た目にも豪華で食卓が華やぐローストビーフ。パーティーの目玉料理にする方もいるのではないでしょうか。ワインを合わせる場合に考えるべきことは「レアは軽め、ウェルダンは重め」というマリアージュの法則の一つです。肉がウェルダンであればあるほどよく噛む必要があり、肉の旨味をより感じるので、重めのワインの方が合うのです。その点ローストビーフは、内側がレアまたはミディアムくらいの仕上がりになりますので、基本的にはやや軽めの赤ワインがおすすめになります。軽めの赤ワインと言うとお安くコスパの高いものも多いですが、ローストビーフはそれなりに高級ですので、ワインもそれに釣り合うような風格のあるものを奮発してみてはいかがでしょうか。ここでは、ちょっと高級な、ローストビーフに合うワインをご紹介します。
ボルドー白
冒頭で、ローストビーフには基本的に赤ワインがおすすめということを述べましたが、実は白が合う場合もあります。それは、ソースにわさびを使い、わさび醤油・わさびポン酢・わさびマヨなどでさっぱりといただく場合です。ポイントはわさびの爽やかな風味。言ってみればわさびは「和のハーブ」ですので、ハーブの香りがある白ワインが合うのです。また、わさびを使わずとも、おろしポン酢でいただくなどポン酢を使う場合、ポン酢には柑橘の果汁が含まれていますので、やはり風味が共通する白が合います。
そこでおすすめしたいのがボルドーの白です。ボルドーの白は主にソーヴィニヨンブランとセミヨンのブレンドで造られ、樽熟成するのが特徴です。ソーヴィニヨンブランにはハーブ香と、柑橘の香り・酸味があるのでわさびやポン酢との接点になり、そこに樽香が加わることで肉の力強い味わいともバランスがとれます。
ピノノワール
冒頭でも述べた通り、ローストビーフには軽めの赤ワインが合います。軽めにもいろいろなタイプがありますが、一番におすすめしたいのはピノノワールです。ピノノワールの繊細な旨味は、出汁や薄口醤油に通じるものがあり、醤油ベースであまり味付けの濃くない、シンプルなソースでいただくローストビーフによく合います。白ワインに合わせる場合同様、ポン酢にも合いますし、あるいは塩・レモン・オリーブオイルでいただくと、肉とワインそれぞれの旨味をよりダイレクトに味わうことができるでしょう。あとは、同じピノノワールでも産地や造り手によって味わいはさまざまなので、肉の火の通り具合やソースの濃さによって、ワインも違ったタイプのものを選ぶとより高度なマリアージュを楽しめます。
リオハの赤(グラン・レセルバ)
これは上で紹介したピノノワールにも言えることですが、赤ワインは熟成が進むと枯葉や腐葉土のような香りが出てきて、醤油や味噌の発酵熟成した風味により近くなります。醤油を効かせたソースに合わせようと思ったら、なるべく熟成したものを選ぶとよいでしょう。とは言え、ピノノワール(特にブルゴーニュ)の長期熟成したものは安くありません。ちょっと有名な造り手のものは軽く1万円は超えてしまいますし、あるいはブルゴーニュ以外ではそもそも長期熟成したものを探すのが難しいという問題もあります。
そこでオススメなのがスペイン・リオハのワインです。リオハのワインの大部分は、最低でも24ヶ月、「グランレセルバ」であればなんと60ヶ月という長期熟成を経て出荷する伝統があり、これは世界的に見ても大変珍しいもの。それでいて価格はリーズナブルで、開栓してすぐに熟成の複雑な風味を楽しむことができます。また、リオハの主なブドウ品種であるテンプラニーリョは、本来果実味が濃く力強いのですが、長期熟成によって角がとれると決して重すぎることはありません。是非予算内で一番古いビンテージのものを選んでみてください。
クネ(CVNE)各種グラン・レセルバ
(「ヴィーニャ・レアル」で十分旨いが、予算に余裕があったら是非「インペリアル」を)
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シラー主体の赤
ローストビーフは一般的に下味として黒コショウをすりこみます。また、ソースにも黒コショウを加えることもあり、多かれ少なかれスパイシーな風味があります。そんな黒コショウのスパイシーさに接点を求めるなら、フランス・ローヌ地方のシラー主体の赤がぴったりです。シラーの大きな特徴はまさにその黒コショウ的なスパイスの香りと、生肉・血などの動物的な香りで、ローストビーフの味わいとバッチリ共通します。
また、シラーにはブラックチェリーなどの黒系果実の香りもあります。加えて果実味の濃厚なグルナッシュがブレンドされることも多く、その果実味は赤ワインを煮詰めたちょっと濃いめのソースとも好相性です。それでいて、上品な酸味も伴っており、渋みもほどよく、オーストラリアのシラーズやカベルネソーヴィニヨンほど重くはありません。さまざまな味付けのローストビーフと幅広く寄り添うでしょう。
クローズ・エルミタージュ・ルージュ “レ・メゾニエ”/M.シャプティエ
(シラー100%。シラーの特徴をバランスよく備えたエレガントな味わい)
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シャトー・ぺスキエ・カンテサンス
(こちらの方がよりしっかりめ。グルナッシュ20%ブレンドで果実味濃厚、スパイシー感も強い)
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カベルネ主体の赤
ここまで再三「軽めの赤がよい」ということを述べてきましたが、そうは言っても「やっぱり赤はガッツリフルボディでしょ」という方もいるでしょう。特にローストビーフをグレイビーソースなど濃厚なブラウン系のソースでいただく場合は、フルボディの代名詞カベルネソーヴィニヨンを合わせる手もあります。ただしその場合でも、重すぎずでエレガントなタイプのカベルネを選ぶことをおすすめします。
カベルネと言えばまずボルドーが思い浮かびますが、ここでおすすめしたいのは、「イタリアの至宝」サッシカイアです。ボルドースタイルで知られる「スーパータスカン」の一つですが、カベルネフランとのブレンド(メルローは無し)であることもあってか清涼感を感じ、綺麗に伸びる酸が印象的。ボルドーよりもスマートで洗練された味わいです。少々お高いですが、未体験の方は是非一度試してみてください。
また、ボルドーがお好きな方は、あえて一流シャトーのセカンドラベルを選ぶとよいでしょう。「セカンド」と言うと聞こえは悪いですが、長期熟成を前提としているファーストラベルに比べ、果実味も渋みもほどよく穏やかで、熟成せずとも楽しめるセカンドの良い意味での軽さは、むしろローストビーフにピッタリ。それでいて味わいは十分しっかりしているので、一流シャトーの世界観を垣間見ることができます。もちろん価格的にはファーストと比べはるかにお手頃です。