刺身とワインを合わせるのはさまざまな難しさがあります。一つは、一口で刺身と言っても種類がいろいろあるということ。例えば白身のタイやヒラメと、赤身のマグロやカツオではワインの相性も本来異なります。ワインを一種類で通すなら、あまり自己主張が少なく、それでいて旨味をしっかり備えている、ということが合うワインの条件になるでしょう。
また、醤油をつけることの問題もあります。醤油は風味・塩味共にインパクトが強いので、刺身に醤油をべったりつけてしまうと、どんな魚でも同じ味になってしまって、違うのは食感だけ、ということにもなりかねません。これを避けるためには、刺身はなるべくシンプルに塩だけで食べましょう。塩で食べることによって、魚介の繊細な風味をはっきり感じることができますし、ワインにも合いやすくなります。もしどうしても醤油で食べたいなら、飲むワインをほんの少し醤油に垂らし、醤油をワインで割るのがオススメ。酸味のまろやかなポン酢のようになるので、刺身も美味しく食べられますし、ワインにもぐっと寄り添います。
さまざまな難しさはありますが、それはさておき、ここでは刺身に合うワインをご紹介します。尚、刺身に合うワインは、以前の記事「寿司に合うワイン」で紹介したものも合いますので、そちらも合わせてご参照ください。
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甲州
和食の刺身は、日本の土壌で育った「甲州」と好相性です。甲州というブドウ品種はそれ自体、あまり際立った個性がないのですが、繊細な味わいの魚介を味わうときにはそれはむしろメリットになります。かと言ってもちろん水のようというのではなく、ほどよい果実味、酸味、苦味があるのが絶妙なバランス。三歩下がって歩き、刺身の風味を引き立てます。
リースリング(辛口)
リースリングの特徴は、シャープな酸味と、柑橘系の香り、豊かなミネラルです。酸味と柑橘と言えばポン酢に通じるものがあり、またミネラルは海の潮や魚自体が持つミネラルと共通します。どんな刺身とも合いますが、特に白身魚とは最高の相性です。
グリューナー・フェルトリーナ
オーストリアを代表する白ワイン、グリューナー・フェルトリーナも刺身にはオススメです。系統としては前項のリースリングと似ていますが、比較すると、グリューナーは、リースリングよりも酸味が控えめで、代わりに、ソーヴィニヨンブラン的なハーブの要素と、甲州的な苦みがプラスされていると言えます。爽やか系ながら複雑な味の要素を持つので守備範囲が広く、食中として重宝するワインです。
ピノノワール
ここまで3種類白ワインを紹介してきましたが、やはり刺身の繊細な味わいを引き立てるには赤よりも白が向いている印象があります。それでもあえて、赤ワインを飲みたいという方には、赤の中では繊細でエレガントなピノノワールをおすすめします。ピノノワールの中でも、より繊細なフランス・ブルゴーニュのものがよいでしょう。ピノノワールは若いうちから枯葉や土などの香りが出やすく、醤油の発酵・熟成した風味と共通するので、その点でも好相性です。
辛口ロゼ
「刺身に白が合うのは分かったけれど、やっぱり赤も捨てがたい」という方は、ロゼを選ぶのが現実的な選択です。ロゼワインは味わいは白に近いのですが、香りは赤に近く、色合い共々、まさに白と赤の中間。どんな種類の刺身も、塩で食べても醤油で食べても、無難に寄り添います。