強烈な匂いと個性的な味わいにハマる人が多いウォッシューチーズ。有名なところでは「エポワス」「アフィデリス」「ラングル」「マンステール」「ポン・レヴェック」「リヴァロ」「ピエ・ダングロワ」「タレッジョ」などがあります。一つ一つ見れば、クセが強いものとそうでもないものがありますが、全体的には風味は強く、合わせるワインにも強い個性が求められます。一般的には赤ワインの相性がよいとされますが、一概にそうとも言えません。ここでは、ウォッシュチーズに合うさまざまなタイプのワインをご紹介します。
ゲビュルツトラミネール
フランス・アルザス地方のウォッシュチーズ「マンステール」には、アルザスの白ワイン「ゲビュルツトラミネール」を合わせるのが定番です。ライチや白いバラなどの甘く華やか香りの中に、クミンや白コショウのようなスパイシー感があるゲビュルツはインパクトがあり、マンステールに限らずウォッシュチーズ全般と見事に調和します。ちなみに、マンステールにはクミンシードをまぶすのが現地の食べ方とされています(このマリアージュセンスはさすが!)。この食べ方を他のウォッシュチーズに応用するのも面白いでしょう。
ちなみに、ゲビュルツトラミネールは、ブドウがよく熟すために、辛口でも口当たりがほんのり甘くなります。甘口ワインが苦手な方はゲビュルツの辛口がよいでしょうが、甘口ワインでも抵抗がないという方は、是非そんなゲビュルツトラミネールの甘口を試してみてください。高級品が多いですが、ウォッシュチーズとの相性は格別ですよ!
ブルゴーニュ赤(力強いタイプ)
フランスのブルゴーニュ地方はウォッシュチーズの産地としても名高く、有名なウォッシュチーズに「エポワス」「アフィデリス」があります。料理とワインのマリアージュの原則には「地元同士で合わせる」というものがあり、これらのチーズにはブルゴーニュの赤を合わせるのが定番とされていますが、実はこの組み合わせはなかなか難しいものがあります。というのも、ブルゴーニュの赤(ピノノワール)は繊細なので、ウォッシュチーズの強い個性に負けてしまうのです。
しかし、先人の知恵が全く間違いであるはずはありません。昔ながらの造りの、果実味を前面に出した、力強く凝縮感のあるタイプは、ウォッシュチーズとなかなかよく合います。ただし、このタイプのブルゴーニュ赤は全体的に見ると少数派で、しかも多くはかなり高価なので、ワイン選びには注意が必要です。比較的リーズナブルなもの中では、以下の2つはかなりオススメできます。
グルナッシュ主体の赤(濃いめ)
ブルゴーニュの赤と比べると外れが少ないのがこちら。果実味豊富な南仏のグルナッシュ主体の赤ワインは、ウォッシュチーズに限らず、チーズ全般と非常に相性が良いです。ウォッシュチーズと合わせると、ワインの中のブラックチェリーやリキュール、ナッツの風味が引き出され、ワインをより美味しくしてくれます。グルナッシュ主体のワインにもいろいろありますが、なるべく濃いめ(フルボディ)で、果実味に凝縮感があるタイプがよいでしょう。オススメは、パスカル シャロンのコート・デュ・ローヌ・ラ・グラン・ウルス。色調は赤というよりほとんど黒。凄まじく濃厚で果実の甘みが前面に来るのですが、酸味・渋みのバランスがよく、心地よい余韻が長く続く逸品です。
マール
「マール」というお酒をご存知でしょうか?ワインを造るために絞ったブドウの搾りかすから造るブランデーで、フランスではマール、イタリアではグラッパと呼ばれます。味は一般的なブランデーとよく似ていますが、よりブドウの風味が濃く、リーズナブルなのが魅力です。実はウォッシュチーズとのつながりも深く、シャンパーニュ地方のウォッシュチーズ「ラングル」は、中央にあるくぼみに「マール・ド・シャンパーニュ」を注いで食べるのが定番とされています。また、ブルゴーニュ地方の「エポワス」は、表面を「マール・ド・ブルゴーニュ」で洗って熟成させており、当然マール・ド・ブルゴーニュとの相性は抜群です。飲み方は一対一の水割りがオススメ。ちょっとマニアックなチョイスですが、なかなかオツなマリアージュです。
シェリー オロロソ(辛口~甘口)
ウォッシュチーズの強い香りは、シェリーなど酸化熟成させた酒精強化ワインの風味にも通じるところがあります。シェリーにもさまざまなタイプがありますが、最も熟成が進んだ「オロロソ」と合わせるのがマリアージュの妙。紹興酒や醤油にも似たオロロソの風味は単体で味わうと強烈すぎるかもしれませんが、ウォッシュチーズと合わせることによって、お互いの旨味が浮かび上がってきます。最初は「なんじゃこりゃ?!」と思っても、実はハマる人が多いのがオロロソ。その意味でもウォッシュチーズとは共通しますね。
また、チーズは基本的に甘口ワインと相性がよいので、オロロソをベースにした甘口「クリーム」もオススメです。
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