日本人なら誰もが大好き、秋の味覚サンマ。魚の中では特によく脂が乗っており、旨味もしっかり。また胃のない魚なのではらわた(腸)の苦みが少なく、はらわたまで美味しく食べられるのも特徴的です。
ワインを合わせる場合、魚介だから白ワインかというと実はそう簡単でもありません。サンマは風味・旨味が強いので、ワインにもそれなりの複雑さが求められます。そのため白ワインは意外と難しく、どちらかと言うと、軽めの赤ワインのほうが合わせやすいです。ここでは、サンマに合うワインを解説します。
熟成感のあるシャブリ
相性を第一に考えると、まず白ワインでは熟成感のあるシャブリは一つの候補に挙がります。シャブリというと、一般的にはすっきり辛口フレッシュなワインの代名詞という感がありますが、中には樽熟成するなどして、フレッシュというよりは複雑で味わい深いシャブリを造る造り手もいます。そもそも土壌に由来するミネラルが豊富で、魚介との相性がよいことでは定評のあるシャブリですので、そこに複雑さが加われば、サンマにはしっかり対応可能です。ただし、スーパー等には普通置いていませんし、比較的高価になりますので、日常の夕食のサンマの塩焼きに合わせるのは躊躇してしまうところです。
ヴィーニョ・ヴェルデ
そこで、少々細かいことには目をつぶり、ガブ飲み系のワインを合わせてしまうのも一つの手です。ポルトガルでは、サンマと味の系統の近いイワシのグリルを、ヴィーニョ・ヴェルデと呼ばれるすっきり辛口微発泡の白ワインと合わせるのが定番になっています。全般的に価格はお手頃で、複雑味こそありませんが、ほのかに磯の香りが感じられるものが多く、魚介との相性自体は悪くはありません。ただし、このタイプのすっきり・さっぱり系の白ワインと合わせる場合は、サンマには是非オリーブオイルをかけましょう。ぐっとワインに寄り添います。
スパークリングワイン(シャンパーニュ/カヴァ)
とは言え、ヴィーニョ・ヴェルデもあまりそこらで売っているワインではありません。そう考えると、白ワインであればスパークリングワインを合わせるのが現実的な選択ではないでしょうか。その場合、是非瓶内二次発酵で造られているものを選びましょう。瓶内二次発酵のスパークリングワインには、旨味成分であるアミノ酸が多く溶け込んでおり、少々クセのある食材でもうまく接点をつくる懐の深さがあります。
瓶内二次発酵の代表格はフランスのシャンパーニュですが、サンマと合わせるということを考えると、価格のバランス的にはスペインのカヴァがおすすめです。しかし、探せば大変お安いシャンパーニュもあり、以下でご紹介しているダルマンヴィルなどは価格以上の価値はあります。
ピノノワール
ここまで白ワインを挙げてきましたが、意外とサンマと相性抜群なのが軽めの赤ワインです。入手しやすさも踏まえ、ピノノワールをおすすめします。ピノノワール特有の、出汁やキノコっぽい上品な旨味はサンマの身の旨味とマッチし、はわわたの風味や苦みはワインにボディを与えまさに相乗効果。また、サンマの塩焼きには醤油やポン酢をかけることが多いですが、ちょっと熟成したピノノワールにはは醤油っぽい香りもありますので、その意味でも好相性です。長期熟成したピノはスーパー等にはあまり置いていませんが、通販で購入する場合は是非なるべく古いビンテージのものを選んでみてください。
ロぜワイン(辛口)
軽めの赤ワインが合うと述べましたが、赤ワインを究極に軽くしたものがロゼワインという見方もできます。ロゼはより白に近い分サンマのはらわたと喧嘩する可能性も低いので、より無難なチョイスと言えるでしょう。ロゼワインならどれを合わせても悪くはありませんが、特に相性がよいのは、酸味の豊かなタイプです。サンマの塩焼きにはレモンを絞りかけることがありますが、ワインの酸味にはレモンと同じ効果があり、よりサンマと合いやすくなります。例えば、ピノノワールのロゼなどは、ピノノワール自体が元来酸味豊かな品種ですのでおすすめです。