イカスミパスタ(イカスミパエリア、イカスミリゾット等も含む)はワインと合わせにくい料理の一つです。マリアージュの原則に「料理の色とワインの色を合わせる」というものがありますが、イカスミに関してはその例外。黒いからと言って、色の濃い力強い赤ワインを合わせると、イカスミの風味が消えてしまうか、逆に生臭い香りが目立ってしまいます。かと言って、生半可なワインではイカスミの強い個性に負けてしまうでしょう。非常に難しい課題ですが、ここではイカスミパスタに合う5種類のワインを提案します。
ヴェルディッキオ
イカスミの風味の大きな特徴の一つに、ヨード香(魚介特有のいわゆる「磯の香り」)が挙げられます。しかもその香りはかなり濃厚。ワインも同様に強めの磯の香りがあるものが好相性です。
イタリアワインには比較的磯の香りがあるものが多いですが、その中でも特におすすめしたいのがヴェルディッキオです。イタリア中部・アドリア海沿岸にあるマルケ州のワインで、ブドウが栽培される地区は特に海に近く、ワインにも潮の香りや、海の塩の苦みにも似たミネラルが感じ取れます。全般的に酸味豊かなすっきり辛口。魚介料理とは全般的に相性がよく、イカスミにもしっかり対応します。
アルバリーニョ
磯の香りがするワインと言えば、スペインのアルバリーニョも有名です。沿岸のリアス・バイシャス地区で栽培されているブドウ品種で、香りはフローラルで甘やかなのですが、飲んでみるとこれが意外に酸味のしっかりあるすっきり辛口。海の潮の香りもかなりはっきり感じられ、香りと味わいのギャップが面白いワインです。香りの存在感がイカスミの個性に負けないのも、イカスミと相性がよい一つの要因と言えるでしょう。イカスミパスタもよいですが、スペインだけに、イカスミパエリアと合わせるのもおすすめです。
プロセッコ
イカスミパスタは、イタリア・ヴェネツィアの代表的なパスタ料理。となると、この地域には合うワインがあるはず。そう考えたときに思いついたのが、ヴェネト州のスパークリングワイン「プロセッコ」でした。特に「コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ」は、2010年にはイタリアの格付け最高ランクDOCGに昇格。豊富なミネラルが魚介類と相性抜群で、泡がイカスミのクセもまろやかに受け止めてくれます。シャンパーニュやフランチャコルタなどと比べ価格の安さも魅力です。
プロセッコ・ディ・コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ/ベッレンダ
(泡のキメが細かくクリーミー。柑橘や青リンゴなどの香りも華やか)
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ピノノワール
冒頭でイカスミパスタと濃い赤ワインの相性がよくないと述べましたが、その理由の一つがイカスミの苦みです。この苦みは赤ワインの渋みと通じるものがあり、あまり力強い(=タンニンが豊富な)赤ワインだと、お互いの苦み・渋みが強調されてしまうのです。というわけで、赤ワインを合わせるなら、渋みの少ない軽め~ミディアムボディのものがおすすめ。イカスミの苦みがほどよくワインにボディを与え、ワインが力強く感じられる化学反応を起こしてくれます。
軽め~ミディアムの赤ワインにもいろいろありますが、今回おすすめしたいのは、コノスルのピノノワール・オーガニック。自然農法で造られたワインはミネラル豊富で滋味深く、イカスミのミネラルとも好相性。スーパー等で入手しやすく、価格もお手頃なのも魅力です。
ロぜワイン(サンセール)
軽めの赤ワインが合うということは、同じことがロゼワインにも当てはまります。ロゼはより白に近い分イカスミと喧嘩する可能性も低いので、より無難なチョイスと言えるでしょう。
ロゼワインならどれも合わせて悪くはありませんが、特に相性がよいのは、酸味の豊かなタイプです。イカスミパスタやパエリアには、レモンが添えられていることがありますが、コッテリとしたイカスミパスタにレモンを絞ると、爽やかな味わいになって次の一口が進むもの。ワインの酸味にはレモンと同じ効果があります。(ここまで紹介してきた4つのワインにもどれも酸味がしっかりあります。)
そんな酸味の豊かなロゼの一つが、ロワールのサンセールです。ロワールはフランスの中でも冷涼で、しかも品種はもともと酸味豊かなピノノワール。また土壌的にもミネラルが豊富で、イカスミとの接点という点でも申し分ありません。