ふぐに合うワイン5選
日本を代表する高級魚の一つ「フグ」。よくフグは「歯ごたえがあって旨い」と表現されますが、歯ごたえがある食材なら他にもいろいろあります。フグの本当の魅力は、上品な海の香り、ミネラルの風味、噛むほどにじわじわと溢れてくる旨みにあるのではないでしょうか。ただ、いずれにしても繊細な味わいであることは間違いありませんので、合わせるワインも同様に繊細な旨みがあるものが求められます。ここではフグに合うワインをご紹介します。
リースリング
冒頭で述べたように、フグの魅力の一つはそのミネラルの風味。ワインも、しっかりとミネラルが感じられるものが相性がよく、その代表格がリースリングです。リースリングは酸味が豊富でまた柑橘の香りがあるので、ポン酢とも相性がよく、特にてっさ(刺身)との相性が抜群です。さらには、ほんのりとハーブの香りがあるので、あさつきの風味ともマッチし、てっさの味わいをより長く、深いものにしてくれます。
若いリースリングもよいですが、熟成したリースリングとのマリアージュはまた格別です。熟成したリースリングは、酸味はまろやかになりますが、ミネラルの風味はむしろ増し、複雑さを増した旨みが、ふぐの繊細な旨みを引き立ててくれます。
シャブリ
ミネラルが豊富なワインと言えば、シャブリを忘れてはいけません。シャブリは、貝殻の化石が多く残る土壌に由来するミネラル分が豊富で酸味も強く、牡蠣に合うワインとしても知られています。牡蠣に限らず、魚介類全般との相性は良く、フグとの相性も間違いありません。
シャブリは、すっきり爽やかな味わいを活かすために、樽熟成をしないのが一般的。確実にフグに合わせるなら、このタイプの樽熟成しないシャブリを選ぶのがよいでしょう。しかし、あえて樽熟成したシャブリを合わせるのも一興です。酸は多少まろやかになりますが、ミネラルは失われず、より複雑な旨みを楽しめます。特に、身の甘さを増した唐揚げとはよく合うでしょう。
シャンパーニュ(ブラン・ド・ブラン)
フグは、噛めば噛むほどに旨みを味わうことができる魚です。その旨みは科学的にも証明されており、イノシン酸、グリシン、リジンなどの複数のアミノ酸系の旨み成分の組み合わせでできていると言われています。そこで、ワインでアミノ酸と言えばシャンパーニュです。シャンパーニュは酵母とともに長期間熟成されるため、他のワインよりもアミノ酸の旨みが多く含まれています。フグ料理の中では、フグの旨み成分がたっぷりスープに出ているてっちり(ちり鍋)や、締めの雑炊などと特によく合うでしょう。
シャンパーニュの中でも「ブラン・ド・ブラン」と呼ばれる、白ブドウのシャルドネのみで造られたものがおすすめです。黒ブドウをブレンドしたシャンパーニュに比べると繊細且つエレガントで、ミネラルの香りをよりはっきり感じられます。もし予算に余裕があれば、より奥深い味わいを楽しめる「ミレジム」(※年号が入ったもの)の長期熟成ものを是非お試しください。
甲州
和食のフグですので、是非日本ワインの甲州も選択肢に加えてみてください。甲州ワインの魅力は、後味に残るほのかな苦み。この苦みは主に甲州ブドウの果皮に由来しますが、これは一種のミネラルとも考えられます。リースリングやシャブリのような、土壌に由来するミネラルとは一味違いますが、やはりふぐのミネラルとはマッチし、お互いの旨みを引き立てます。リースリングやシャブリと比べると酸味はまろやかなので、ワインの酸味が苦手な方にもおすすめ。
ピノノワール
ここまで白ワインばかり紹介してきましたが、やはり繊細な味わいのフグには白ワインのほうが合わせやすいのは確か。それでも、もし赤ワインを合わせたいなら、ピノノワールを合わせましょう。
ピノノワールは、色が淡く、果実味や渋みも控えめで、滋味深い味わいが魅力の繊細な品種。酸味は豊かで、優れたものはしっかりミネラルも感じられるところから、フグに合わせるならこれしかないという赤ワインです。特に熟成したものはほんのり醤油の風味を感じられ、ポン酢の味わいに通じるところもあります。てっさ、てっちりをポン酢でいただくのに合わせるのはもちろんよいですし、あえて塩で食べて、口の中でポン酢風に「口中調味」するのもまた楽しいです。
ピノノワールは、果実味が際立ちすぎる温暖な地域のものよりも、冷涼な地域のものがよいでしょう。フランス・ブルゴーニュ産、またはさらに冷涼で、石のようなミネラルが感じられるドイツ産がおすすめです。1本目はリースリング、2本目はシュペートブルグンダー(=ピノノワール)とドイツ尽くしにするのも面白いのではないでしょうか。