トリュフに合うワイン5選
「世界三大珍味」のひとつトリュフ。言わずと知れた高級食材であり、キノコ類のエッセンスを凝縮した香りに、土や森の香りをプラスしたようなその特有の芳香は、世界中の人々を魅了して止みません。
トリュフに合うワインは、一言で言えば、長期熟成したものです。そもそもワインとは、ブドウという果実から造られた自然の飲み物であり、木から落ちた果実や枯葉が土に還るのと同じように、長期熟成したワインも枯れた味わいになり、土やキノコを思わせる香りが出てきます。この香りがトリュフと抜群に合うのです。長期熟成したワインは、コストがかかっているので一般的に高価ですが、トリュフ自体が高級食材ですので、価格的にもバランスがよいと言えます。是非奮発して長期熟成ワインにトライしてみてください。
ただし、長期熟成ワインの選び方にも注意が必要です。というのも、ボディが強いワインは熟成に時間がかかり、なかなか熟成の魅力が出てこないからです。すぐに熟成の枯れた味わいを楽しむには、熟成期間としては、最低でも10年、できれば15年以上が望ましく、元がミディアムボディのものがオススメです。ここでは、トリュフに合うワインを、オススメの造り手と共にご紹介します。
熟成したピノノワール
個人的には最もオススメしたいのはピノノワールです。ミディアムボディワインの代表格で、若いうちはストロベリー、チェリー、ラズベリーのようなチャーミングな赤い果実の香りが支配的ですが、熟成するにしたがって、紅茶、森の下草、腐葉土、キノコ、なめし革のような、複雑で魅惑的な香りが出てきます。
オススメのピノノワールはフランス・ブルゴーニュ産のものです。最近はブルゴーニュ以外でも優れたピノノワールを造る国が増えてきていますが、やはりブルゴーニュ産は熟成したときの味の深みが断然違います。また、ブルゴーニュ以外では長期熟成したものを探すのが難しいという問題もあります。
オススメの造り手はセリエ・デ・ウルシュリーヌです。厳密には「造り手」というより「ネゴシアン(ワイン商)」ですが、そのコネクションを活かし、古酒を所有するさまざまな造り手から古酒を購入し、自社で瓶詰めやさらなる熟成を行っています。販売しているワインはほとんどが長期熟成したもので、古酒専門といっても過言ではない貴重な造り手です。
熟成したネッビオーロ
ブルゴーニュのピノノワールで長期熟成したものは、前項のセリエ・デ・ウルシュリーヌこそ比較的リーズナブルですが、一般的にはかなり高価です。そこで、ピノノワールに似た系統でオススメしたいのが、イタリアのネッビオーロという品種です。ネッビオーロは、ピノノワールと比較すると、タンニンがやや強く、アルコール度数がやや高いという違いこそありますが、色合い、味わい、香りなどその他の特徴はピノノワールと非常によく似ています。それでいて全般的にリーズナブルで、またそのタンニンの強さゆえに長期熟成が前提となっており、古酒を入手しやすいというのもポイントです
ネッビオーロ使った銘柄としては、有名どころではバローロやバルバレスコなどがあります。もちろん素晴らしいワインが多い一方で、中には粗悪なものもあるのも事実。コスパを考えると、ランゲやネッビオーロ・ダルバなどが意外と狙い目です。
オススメの造り手はカーサ・ヴィニコラ・ニコレッロです。奇をてらわない伝統的な造りと、飲み頃になったもののみを出荷することにこだわっている造り手で、流通しているものはどれもほどよい熟成感のある素晴らしい味わいです。
熟成したモナストレル
長期熟成したワインを見つけやすいもう一つの国がスペインです。スペインの赤ワインの熟成表記には、「クリアンサ(24ヶ月以上熟成)」「レセルバ(36ヶ月以上熟成)」「グランレセルバ(60ヶ月以上熟成)」の3種類があり、多くのワインを、長い樽熟成を経て飲み頃になってから出荷する伝統があります。
スペインの赤と言えば最も多い品種はテンプラニーリョですが、今回ご紹介したいのは、ちょとひねってモナストレル(仏名ムールヴェードル)です。果実味、タンニン、酸味、スパイス感など全ての要素が非常に力強く、フランスでは主にボディを足すためのブレンド用として使われる品種ですが、スペインではこのモナストレル100%のワインが多く作られています。当然ながら超フルボディで、熟成にも長い時間を要するため、スペインの熟成の伝統はうってつけ。熟成して角が取れると、土やなめし革の香りがよく出てきて、官能的な味わいになります。
オススメの造り手はサン・イシドロです。古くから地ブドウであるモナストレルの研究に取り組んでおり、モナストレルの魅力を引き出す技術にかけてはスペイン随一。害虫等の出にくい気候と土壌にも恵まれ、自然環境に配慮した栽培・醸造を行う自然派としても知られています。市場に出回るワインはだいたい25年以上は熟成したもので、まさに飲み頃。熟成モナストレルの魅力にはまること必至です。
熟成したシャルドネ
赤ワインと比べると、白ワインは若いうちにフレッシュな味わいを楽しむものが多く、どちらかと言うと熟成には向きませんが、骨格がしっかりした一部のワインは、長期熟成することによって新たな魅力を発揮します。
長期熟成に向く白ワインの品種と言えば、ブルゴーニュのシャルドネは外せません。シャルドネは世界中で栽培されていますが、ブドウそのものに突出した個性はなく、その土地の気候や土壌、醸造方法などがワインの味わいに大きく反映されます。ブルゴーニュのコート・ド・ボーヌ地区のシャルドネは、その寒暖差のある気候ゆえに糖度と酸が高レベルでバランスよく、また土壌に由来するミネラルが豊富で、他地域に比べ長期熟成に耐える高いポテンシャルを持ちます。
オススメの生産者はパトリック・クレルジェです。ネゴシアン(ワイン商)でもある大手ワイナリーで、フランス中から高品質なブドウを集め、高品質なワインをリーズナブルな価格で造り、古酒も多く取り揃えています。
熟成したリースリング
リースリングも熟成に向く品種の一つです。リースリングの特徴はシャープな酸味と豊かなミネラルで、これが長期熟成に耐える骨格となります。
リースリングは、若いうちに飲むと柑橘系の酸味が前面に出る味わいですが、熟成するにつれ、若いうちにはあまり感じられなかったフルーツやハチミツ、スパイスなどさまざまな香りが現れてきます。さらに熟成を重ねると、ナッツや枯葉などの熟成香と共に複雑さを増し、得も言われぬ香りを醸し出します。
オススメの造り手はアルザスのシャトー・ドルシュヴィールです。自然な造りにこだわる職人気質の造り手で、ブドウは収量を厳しく制限することによって糖度を上げ、さらにそれらが完熟してから収穫します。そのためワインはアルザスワインには珍しいしっかりした果実味があり、長期熟成したワインにも厚みが感じられます。